2024.02.22
お知らせ産業用ロボットを操作するには、企業や団体が主催する教示の特別教育を受講する必要があります。教示の特別教育は事業主に義務付けられており、どこで受講させればよいか迷う人もいるのではないでしょうか。
従業員に産業用ロボット教示の特別教育を受講させる時は、会社で導入している産業用ロボットと同じロボットで実技ができる団体や施設に申し込むのがおすすめです。
この記事では、産業用ロボットの教示の特別教育とは何かを解説します。特別教育のコストを抑えられるよう、受講場所ごとの費用相場もまとめましたので、受講を検討している事業主の方はぜひご覧ください。
産業用ロボットの特別教育とは
産業用ロボットの特別教育とは、労働安全衛生法で規定された教育プログラムの1つです。特別教育では、産業用ロボットを安全に操作・メンテナンスする技術と知識を習得できます。
産業用ロボットを操作・検査するには、この特別教育を受講しなければなりません。産業用ロボットは、操作ミスやメンテナンスの不備により、大きな事故を引き起こす可能性があるからです。
労働安全衛生法では事業主に対して、産業用ロボットを操作・メンテナンスする業務に従事している従業員に、特別教育を受講させることを義務付けています。特別教育を受講していない従業員が、産業用ロボットの操作やメンテナンスの業務をおこなうと、従業員だけでなく事業者も罰せられるので覚えておきましょう。
産業用ロボットの特別教育では、産業用ロボットの動作位置や順番をプログラミングする教示と故障やメンテナンスに関する知識を学ぶ検査の2種類があります。
産業用ロボットの教示の特別教育とは
産業用ロボットの教示の特別教育では、産業用ロボットに動作の位置や順番、速度などをプログラミングする方法を学びます。産業用ロボットの教示の特別教育に必要な受講科目や講習時間は次の通りです。
科目 | 受講時間 | |
学科 | 産業用ロボットの基礎知識 | 2時間以上 |
産業用ロボットの教示等の作業に関する知識 | 4時間以上 | |
労働災害事例の紹介と関係法令 | 1時間以上 | |
実技 | 産業用ロボットの操作方法 | 1時間以上 |
産業用ロボットの教示等の作業方法 | 2時間以上 |
産業用ロボットの教示の業務は、ロボットのすぐ近くでおこなうことも多く、接触事故の危険が伴います。産業用ロボットの教示の特別教育を受講することにより、ロボットを使った業務を安全に遂行するための技術や知識が身につけられます。
産業用ロボットの検査の特別教育とは
産業用ロボットの検査の特別教育では、ロボットの検査や点検、修理などメンテナンスに関する業務を学びます。産業用ロボットの検査の特別教育に必要な受講科目や講習時間は次の通りです。
科目 | 受講時間 | |
学科 | 産業用ロボットの基礎知識 | 4時間以上 |
産業用ロボットの検査等の作業に関する知識 | 4時間以上 | |
労働災害事例の紹介と関係法令 | 1時間以上 | |
実技 | 産業用ロボットの操作方法 | 1時間以上 |
産業用ロボットの教示等の作業方法 | 3時間以上 |
産業用ロボットの検査の特別教育では、ロボットの構造や各部品の種類などを熟知する必要があるため、教示よりも受講時間が長くなります。産業用ロボットの検査は、ロボットを停止しておこなうのが原則であり、「特別教育は必要ないのでは」と考える人もいるでしょう。
しかしながら、ロボット点検後の確認作業や誤作動により接触事故が発生する可能性があります。そのため、検査作業に従事する人も安全に業務ができるよう特別教育を受講する必要があるのです。
産業用ロボット教示の特別教育の受講場所・費用相場
産業用ロボット教示の特別教育の受講場所は3種類あります。特別教育を受講する場所によって費用やカリキュラムの内容、日数が異なるため確認しておきましょう。
施設 | 特徴 | 受講日数 | 費用相場 |
労働基準協会連合会 | 学科のみ開講している。実技はメーカーまたは企業で受講する必要がある | 日帰り | 12,000円~ |
企業 | 特別教育を含むロボット教育をメインとしておこなっている企業が多い | 2日間 | 35,000円~40,000円 |
ロボットメーカー | メーカーによっては導入企業の従業員のみ対象としていることもある。費用が高額。 | 2日間 | 40,000円~110,000円 |
ここからは、それぞれの受講場所の特徴やメリット・デメリットをご紹介します。
労働基準協会連合会
各都道府県の労働基準協会連合会では、定期的に産業用ロボット教示の特別教育を実施しています。労働基準協会連合会で教示の特別教育を受けるメリットは、テキスト込みで12,000円から受講可能と、費用が安価な点です。
しかしながら、労働基準協会連合会の多くは、特別教育の学科しか開講されていません。実技は別途、産業用ロボットメーカーや特別教育を実施している企業で受講する必要があります。
受講日程も年に3~4回と限られているため、タイミングが合わないと受講まで待機しなければならないデメリットがあります。
ロボットメーカー
産業用ロボットメーカーでも定期的に教示の特別教育が実施されています。製造現場で使用する産業用ロボットを使った実技ができるため、特別教育修了後、すぐに現場で業務ができるのが大きなメリットです。
メーカーによっては特別教育以外にも、さまざまな教育プログラムが用意されており、特別教育以外の技術や知識も習得できます。
一方で、産業用ロボットメーカーの特別教育の受講費は、メーカーによって異なりますが、総じて高額に設定されています。また受講開催頻度は高いものの、ロボットメーカーの教育施設は郊外にあることが多く、事業所によっては受講日数とは別に移動日も設ける必要がある場合も。
そのため、ロボットメーカーでの教示の特別教育の受講はコストや従業員の負担が大きくなる恐れがあります。
企業
産業用ロボットを取り扱う企業の中には、ロボット教育事業をメインに実施しているところもあります。受講者のニーズに合わせて、講習の種類や回数が多く、実技で取り扱う産業用ロボットも豊富なのがメリットです。
また全国各地の企業で産業用ロボットの特別講習を開催しているため、最寄りの企業に申し込むこともできます。ただし、企業はメーカーではないため、事業所で導入している産業用ロボットが用意されていなかったり、型が異なっていたりする可能性も。
企業で教示の特別教育を受講する際には、実技で使用する産業用ロボットが事業所で使用するロボットと同じものかを確認しておきましょう。
ICS SAKABEは九州・福岡で産業用ロボットの教示の特別教育を開催中
ICS SAKABEでは、九州・福岡にあり、複数の産業用ロボットを組み合わせる技術を持つ企業です。これまでさまざまな産業用ロボットを取り扱ったノウハウを活かし、産業用ロボットの教示の特別教育を開講しています。
特別教育の1回の講習につき受講者数8名までという、少人数制の授業スタイルを取っており、受講者が不明点などをすぐに講師に質問できる環境が整っています。ICS SAKABEで開講している特別教育の受講にかかる費用や内容、時間は次の通りです。
コース名 | 内容 | 日程 | 時間 | 費用 |
教示コース | 産業用ロボットの基礎知識・教示に関する知識など | 2日間 | 9:00~16:30 | 37,400円(税込) |
教示+検査コース | 産業用ロボットの教示・検査作業に関する知識など | 2日間 | 8:30~19:00 | 42,900円(税込) |
また実技では、安川電機製とファナック製の産業用ロボットを用意しています。
メーカー | 産業用ロボット |
安川電機 | GP7(コントローラー:YRC1000) |
MH5(コントローラー:DX100) | |
ファナック | CR7iA/L(コントローラー:R-30iB Mate) |
2024年1月時点で、ファナック製の産業用ロボットは調整中のため受付停止中です。ファナック製の産業用ロボットでの実技再開は、公式サイトまたは当社に直接お問い合わせのうえご確認ください。
産業用ロボットの特別教育に関するQ&A
産業用ロボットの特別教育に関するよくある質問とその回答をご紹介します。
特別教育を受講しなければならない理由とは?
産業用ロボットの操作ミスや人為的なミスにより、重大な事故を起こす可能性が高いからです。厚生労働省の労働災害統計確定値(令和4年度)のデータによると、製造業で発生しやすい災害事故は、機械による「はさまれ・巻き込まれ」事故が最多となっています。
令和4年に製造業で発生した機械による「はさまれ・巻き込まれ」事故数は6416件です。令和3年の事故発生件数が6501件なので、若干減少はしていますが、ここ数年横ばいとなっています。産業用ロボットを使った作業を安全におこない、事故を防止するためにも特別教育の受講は欠かせません。
特別教育受講の対象者は?
産業用ロボットの特別教育の対象者は、産業用ロボットを扱う従事者全員です。基本的に、産業用ロボットの可動範囲内で作業する人が特別教育の対象となります。
ただ産業用ロボットの可動範囲外にいても、可動範囲内で作業する人と協力して作業を行う場合は、可動範囲外の人も特別教育を受講しなければなりません。また特別教育受講は、従業員ではなく事業者に義務付けられています。
産業用ロボットの操作は資格がないと操作できない
すべての産業用ロボットの操作に対して、特別教育の教示資格が必要とは限りません。産業用ロボットの産業用ロボットの1つである「協働ロボット」で出力が80W未満の場合に限り、特別教育は必要ありません。
協働ロボットは人と同じ環境で作業することを目的として開発されており、接触があった場合でも、リスクが少ない設計・製造となっているからです。
まとめ
産業用ロボットを操作するには、全国各地にある企業や団体、ロボットメーカーで開催している教示の特別教育を受講する必要があります。産業用ロボットを導入している事業主は、従業員に特別教育を受けさせる義務があるので覚えておきましょう。
産業用ロボット教示の特別教育は受講場所によって、かかる費用や実技で使用するロボットが異なるため、申し込み時には注意が必要です。コストを抑えたまま、現場ですぐ業務に活用できる知識や技術を従業員に身につけさせたいのであれば、企業で開催している特別教育の受講がおすすめです。
ロボットセンター検索を活用すれば、勤務先で導入しているロボットを用いた教示の特別教育を開講している企業を検索できます。教示の特別教育の受講場所の選定に迷っている方は、ぜひご活用ください。
また、九州・福岡で産業用ロボットの教示特別教育の受講を検討している方は、ICS SAKABEも選択肢の1つとして検討してみてはいかがでしょうか。